金融庁が「満65歳で現役引退する場合、夫婦二人世帯で2,000万円必要」というレポートが大きな問題となりましたが、このレポートで指摘されるまでもなく、65~69歳の夫婦世帯平均で2,200万円超、単身世帯でも1,500万円超の金融資産を保有しています。その資産の寿命を如何に延ばしていくかが課題となっています。

資産寿命を延ばすために必要なこと
「金融資産増やすために何をしてますか?」と聞かれたらなんと答えますか?
「積立貯蓄してます」「個人年金積み立ててます」「株取引やってます」「投資信託始めました」等々、このブログを購読されている皆さんは、すでに何らかの方法で金融資産をお持ちだと思います。さらに上級者は「FXやってます」「不動産投資してます」「仮想通貨買ってます」なんて方もいらっしゃるでしょう。
下のグラフのとおり、金融庁が日本FP協会の調査結果を引用しています。20~30代は「共働きなどで収入を増やす」「資産形成に取り組む」という回答が多く、定年近い50代は「現役で働く期間を延ばす」が増え、60代以降は「生活費削減」「医療費削減」と節約モードになっています。「資産形成の知識を身につける」は15%前後ですが、意外なのは「ファイナンシャルプランナーなど専門家に相談する」というのが、60代、70代ではは5%前後なのに対し、20代、30代が10%超と二倍以上になっていることです。これは若年層ほど将来の公的年金や終身雇用制度崩壊に不安を抱き、早くから資産形成に関する正しい方法を学ぼうという意欲の表れだと思われます。

金融庁のレポートでは、老後のために準備した資産について内閣府の調査を引用しています。金利がほとんどつかない預貯金と退職一時金に依存していて、株式、債券、投資信託を含めた「証券投資」を挙げた人は二割以下に留まっています。「有価証券投資が必要だ」と思いながら、行わない理由を調査したところ、「まとまった資金がない」「知識がない」、「損しそうで怖い」「何を買ったら良いかわからない」という回答でした。

日本人は、学校教育で投資の勉強をほとんどしてこなかったため、「投資」=「ギャンブル」というようなイメージがあるようです。金融庁は、金融機関が顧客のニーズや悩みに寄り添ってこなかった結果だと指摘しています。
超低金利時代の長期化がもたらす資産運用格差
知識がないために、元本保証の金融商品しか購入したくないという人は圧倒的に多いようです。実際、日本では社会人になってからも、資産設計や資産運用を学ぶ機会がほとんどなく、大手金融機関もほとんどが自社金融商品販売目的の説明しかしません。コロナ禍後の株高で資産を大幅に増やした人が増えた一方で、コロナによる生活苦で預貯金を切り崩さざるを得ない人もいて、金融資産のポートフォリオの違いで格差が生まれてきています。
保険の販売に関しては「保険の○○」のような、「複数の保険会社の商品を取り扱い、最適な商品を提案できる」と謳う代理店が増えてきましたが、顧客利益より代理店利益を優先しがちになるのは否めません。中には保険会社に社員を派遣させている企業もあります。準国営企業が高齢者をターゲットにした保険商品の不適切な販売で営業停止処分を受ける時代です。顧客側がある程度の知識を持っていないと、提案された商品が適切なのかは判断できません。
未だに「投資商品」を販売する無料集客セミナーで、投資内容と収益性を理解したつもりになり、利益が出ないどころか損失を生み続ける投資商品の購入申込みしてしまう方が後を絶ちません。数年前に問題になった「かぼちゃの馬車」事件などは典型的な事例です。
アドバイザーの活用
金融庁のレポートでは、個人のライススタイルが多様化し、金融商品やサービスも多様化してきているため、個人の知見だけで選択していくことは難しくなってきていると指摘しています。そこで、顧客の個別事情に合わせた的確なアドバイスができるアドバイザーの活用が重要であると提唱しています。

現状は身近な金融機関(多くは個人口座がある銀行等)が担うことが想定されていますが、業態ごとの取り扱い商品・サービスが多様化しているため、単一業態のサービス提供業者がすべての商品・サービスを俯瞰したアドバイスを行うことは難しいと指摘しています。
このため、顧客に最善の利益をもたらすという視点で、ライフステージに応じたマネープラン等を総合的にアドバイスできるアドバイザーが重要な役割を果たす必要があると指摘しています。こうしたアドバイザーになる得るのは、投資助言・代理業、金融商品仲介業、保険代理店、ファイナンシャルプランナーなどが存在するものの、米国のように金融サービス事業者から完全に独立して顧客に提案できるアドバイザーは少ないため、その認知度向上や質的改善に努めることを求めています。
こうしたアドバイザーとしての能力や資質を認定するため、ファイナンシャル・プランニング技能士という国家試験とファイナンシャルプランナーの国際的なライセンスであるCFP®(CERTIFIED FINANCIAL PLANNER®)認定試験の二つがあります。専門的な知識を持つ1級FP技能士とCFP®の両方の資格を有する人をファイナンシャルアドバイザーとするのが安心ですが、残念ながらこの両方の資格を持つ多くの人は金融機関で自社の金融商品販売員をしており、顧客視点での提案でなく、勤務先の利益拡大のための提案をせざるを得ない状況にあります。
#金融庁,#アドバイザー,#CFP,#資産形成, #証券投資,#ファイナンシャルプランナー
コメント